
ご挨拶
この度、東京科学大学大学院医歯学総合研究科 臨床検査医学分野の教授に着任いたしました。私はこれまで、内科・血液内科医として白血病を中心とした難治性疾患の診療に携わるとともに、分子病態解析や次世代シーケンス(NGS)を基盤としたトランスレーショナルリサーチに従事してまいりました。その経験を通じて、適切な検査が適切なタイミングで行われることが、患者さんの未来を大きく左右することを、日々実感してまいりました。
臨床検査医学は、診断や治療選択を支える基盤であり、近年はゲノム医療や個別化医療の進展とともに、その役割はますます重要になっています。一方で、検査体制のさらなる高度化や迅速化、検査結果を臨床研究や治療開発へと円滑につなげる仕組みづくりには、まだ発展の余地があると感じています。こうした点に丁寧に向き合い、検査を通じて一人でも多くの命を救うことが、本分野に課せられた大きな使命であると考えています。
本分野では、従来の検体検査・生理検査の質の向上に加え、がんゲノム医療や微小残存病変(MRD)解析、データサイエンスを融合させることで、診療・研究・臨床試験が自然につながる臨床検査医学の実現を目指してまいります。その積み重ねが、結果として新たな治療開発や国際的な臨床研究の推進につながり、日本の医療の発展に寄与すると信じています。
東京科学大学(Science Tokyo)のミッションである「科学の進歩と、人々の幸せと」を実現するため、臨床・教育・研究を三位一体として推進し、臨床現場を深く理解しつつ、未来の医療を切り拓く力を持った人材の育成に注力してまいります。学生、研修医、大学院生、臨床検査技師、研究者が、それぞれの立場で主体的に学び、成長できる講座を築いていきたいと考えております。
臨床検査医学分野が、診療科や研究分野の垣根を越え、学内外の多様なパートナーと連携しながら、検査を起点として医療の質向上に貢献する存在となれるよう、誠実に、そして着実に取り組んでまいります。今後とも、皆様のご指導とご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。