
ご挨拶
このたび、2025年6月付で大学院医歯学総合研究科薬理学分野の教授を拝命いたしました。私は京都大学医学部医学科を卒業後、同大学大学院医学研究科にて助手・助教・特定准教授を務め、また米国ジョンズ・ホプキンス大学への留学を経て、2014年より神戸大学医学部・大学院医学研究科の教授として、薬理学の教育と研究に従事してまいりました。
薬理学は、薬物と生体との相互作用や疾患の病態に関わる分子機序を解明し、それを治療や創薬へと応用することを目的とした学問です。近年では、疾患モデルの多様化や新たな治療モダリティの登場により、医学研究における薬理学の重要性はますます高まっています。
こうした背景のもと、当研究室では、うつ病や認知症といった「こころの病」の病態解明および創薬を目指した薬理学研究を推進してまいりました。慢性ストレスや老化に関するモデル動物を用い、シングルセル・マルチオーム解析、全脳イメージング、分子・神経回路操作技術など先端技術を駆使して、分子・細胞・神経回路レベルから、脳と末梢との連関に至るまで、ストレスや老化による脳機能変容やそのレジリエンスを担うメカニズムを多層的に解明することを目指しています。また、臨床現場や企業との連携を通じて、基礎研究の成果を臨床応用へとつなげる橋渡し研究にも力を入れています。
教育面においては、薬理学を通じて基礎医学の魅力を伝えるとともに、研究的視点を持った臨床医の育成、さらには基礎医学や橋渡し研究を担う人材の育成にも尽力してまいります。近年、安定志向や研修期間などの長期化に伴い、医師の基礎研究離れが進んでいると指摘されています。私は基礎医学教育者の一人として、医学研究の面白さと意義、大学教員という職業の魅力を学生に伝えることで、次世代の医学を担う研究者の育成に貢献したいと願っております。
今後とも、薬理学の研究と教育を通じて「こころの病」の克服、次世代の医学・医療を担う人材の育成に全力を尽くしてまいります。何卒宜しくお願い申し上げます。