
ご挨拶
この度、2023年6月1日付で、本学大学院医歯学総合研究科ハイリスク感染症研究マネジメント学分野の教授を拝命いたしましたので、謹んでご挨拶を申し上げます。本講座は、WHOによるCOVID-19パンデミック緊急事態宣言の終了および本邦での5類感染症への移行の節目を迎えたところで、今後のパンデミックに備えるべきハイリスク感染症への対応および感染症に強い組織づくりを見据えた基礎学術研究展開を行うため、本年度新たに設置された分野です。
私は、東北大学でヒトエイズウイルス(HIV)の自然感染伝播メカニズムの研究により学位を取得しました。その後、米国国立アレルギー・感染症研究所(NIH/NIAID)および東京大学医科学研究所・感染症国際研究センターにてHIVの起源であるサルエイズウイルスのヒトへの種間感染伝播メカニズムについて研究を進めました。さらに東京医科歯科大学ウイルス制御学分野では、新たなHIV感染制御法の基盤確立をめざしてHIV感染制御宿主因子群の同定および機能解析を進めるとともに、COVID-19の原因病原体であるSARS-CoV-2の全ゲノム解析および性状解析も進めることで、感染症研究において病原体を様々な視点から見極めていく幅広い知識と経験が必要であることを学びました。
COVID-19パンデミックからハイリスク感染症対応における様々な問題点が浮き彫りになりました。特に「BSL3研究施設の不足」と「レベル3相当の病原体を取り扱える人材の不足」が本邦におけるCOVID-19戦略に大きな影響を与えたことから、本分野では、①BSL3およびABSL3施設を用いた感染症研究、②集約化されたBSL3施設と学内外の連携による感染症研究マネジメント、③レベル3相当の病原体を取り扱える専門人材の育成、の3項目を主体として研究教育に取り組んでいきます。そして感染症有事の際には、学内外の関係機関との密な連携体制を構築するとともに、本学統合臨床感染症学分野および感染症健康危機管理学分野と密に連携し、臨床・社会・基礎の各分野が三位一体となって感染症危機対応に真摯に取り組む所存です。
どうぞ、皆さまのご指導ご鞭撻を賜りますようよろしくお願い申し上げます。