
ご挨拶
この度2021年10月1日付けで、本学大学院医歯学総合研究科生体集中管理学分野の教授を拝命致しました。本分野は国公立大学で唯一、麻酔科や救急科から独立した形で教室を有する集中治療医学講座として、米国ネバダ大学から着任された重光秀信初代教授が2016年に立ち上げられた、まだ若い教室です。
新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)のパンデミックに於いて、日本における医療提供体制、なかでも重症患者への医療提供体制を強化する必要性が叫ばれております。集中治療医学はこの20年余りで世界的に大きな発展を遂げ、多くの国で独立した専門領域として認識されるようになり、大規模臨床試験も数多く行われるようになりました。この数年ではデータサイエンスとの相性が良い特徴や、COVID-19における最も重要な重症呼吸不全患者診療の最後の砦としての役割により、さらなる発展を世界的に遂げようとしております。
しかしながら日本においては、従来より兼任医師で賄う小規模かつ大部屋形式の集中治療室が中心であり、臨床研究及び基礎研究基盤も脆弱である現状を受けて、国際的に影響を及ぼすような研究成果の創出という面で大きく水を開けられており、そのことが今回のパンデミックで明らかとなりました。そのような時代背景の中で、病院の1診療部門としての役割にとどまらず、大学院大学における独立した教室として基礎・臨床研究、そして学生教育を行うことが可能な、本学の生体集中管理学に期待される役割は大きく、私自身も気持ちを引き締めて教室員一同、頑張って参りたいと思います。
私は2002年に本学を卒業後、小児科医としての研修を積む中で呼吸不全に興味を持ち、2007年から英国Imperial College Londonに大学院留学致しました。英国では急性呼吸窮迫症候群を始めとした、集中治療領域のトランスレーショナル・リサーチに携わり、人工呼吸器関連肺傷害が肺外臓器に及ぼす影響の機序解明や、製薬会社との共同研究として新規抗体医薬の前臨床試験などに携わりました。2013年に帰国してからは、2015年に生体集中管理学へ赴任して初代医局長を務めながら、国内ではユニークな集中治療領域のトランスレーショナル・リサーチ研究室を主宰し、近年基礎医学領域でも注目を集める細胞外小胞の重症疾患における役割と臨床的意義についての国際共同研究を、国内で先駆けて行って参りました。コロナ禍においては国内有数のコロナ重症診療体制の構築や、産学連携を背景とした汎用型人工呼吸器開発のプロジェクトなどにも中心的に携わっております。
今後とも学内外の皆様からの一層のご指導、ご鞭撻を賜りながら、臨床、研究、教育に励む所存でございますので、どうぞ宜しくお願い申し上げます。