
ご挨拶
2020年1月1日という、とてもキリのいい日付で膠原病・リウマチ内科学分野に着任いたしました、保田晋助と申します。私は北海道大学の出身ですが、学生の頃からなぜか免疫学には惹かれるところがありました。本来感染症からの防護のために進化してきた免疫系が自己を非自己と認識してしまう自己免疫疾患の発生機構には、未だファジーでミステリアスな部分が残されています。特に全身性自己免疫疾患のプロトタイプとも言われる全身性エリテマトーデスは、関節炎や皮疹のみの比較的軽症の患者さんから腎障害・中枢神経障害・最重症の肺胞出血をきたす患者さんまで同じ病気とは思えないほど様々な症状を呈します。特に若年女性の発症が多いことも、その後のライフイベントを迎える際に障害となることもあり、この病気を何とか良くすることができれば・・と考え続けてきました。強皮症・皮膚筋炎・多発性筋炎・血管炎をはじめとして様々な膠原病および炎症性疾患にも難治性病態が存在し、これらに対するマネジメントを中心に据えてこれまで診療を行って参りました。
我々の診療範疇で唯一のコモンディジーズとも言える関節リウマチに関しては、近年の生物学的製剤によって治療は劇的な変化を遂げ、高度な関節変形に至る患者さんは少数になりました。しかし、高価な生物学的製剤をもってしても、関節リウマチの寛解率は約半数に過ぎず、どうしても感染症という副作用の懸念はついて回ります。この数年、免疫系を過度に抑制しないで関節内の滑膜細胞の増殖を抑制できる新たな治療を目指して、探索的な研究を行って参りました。この滑膜を対象としたリウマチ研究は、東京医科歯科大学において綿々と受け継がれてきたテーマであり、今後も研究の大きな柱として発展させたいと考えています。
我々の診療する疾患は"何でもあり"の全身疾患ですので、多くの診療科の先生型のご協力なしにはとても立ちゆかない分野です。逆に、不明熱や複数臓器にまたがる症状など、お困りの際には気軽にご相談頂けますと幸いです。院内・院外ともに風通し良く、垣根を低く、診療に当たりたいと存じます。また、自己免疫疾患は生涯にわたって付き合っていかなければならない疾患であり、特に小児発症・若年発症の患者さんは免疫不全症とも表裏一体の関係にあることも稀ではありません。こうした"免疫難病"ともいわれる疾患を長きにわたって診させて頂くことも、我々のやりがいのひとつとなっています。
東京医科歯科大学と北海道大学とは何かと交流が多く、とても中の良い関係にあり、私もご縁があってこちらに来させて頂くに至ったと感じております。以前からの交流もあって医局員の多くは小生と旧知の仲であり、真面目で優秀、気持ちのいいメンバーです。自由闊達な雰囲気、多様性の中から良い診療・エキサイティングな研究は育つと考えています。学内・学外の基礎系および臨床の先生型にはご指導・ご協力頂く場面も多くなるかと存じますが、今後とも、当診療科・教室へのご支援・ご指導よろしくお願い申し上げます。