
ご挨拶
平成も終わろうとしている2019年2月に9年間過ごした京都大学精神科より、本学大学院精神行動医科学分野/医学部附属病院精神科の教授として着任させていただきました。1997年に今の病棟が出来た時に研修医として学んで以来、21年ぶりに母校に戻る機会をいただきました。
教育・診療・研究の3本柱が三位一体となり本学の理念である豊かな人間性を有し、自ら考え解決する創造性と開拓力を備え、心と身体を癒す質の高い医療を提供する人材の育成を目指します。
精神医学を取り巻く環境も刻々と変化し、私たちに求められる内容も多様化しています。到底、大学単独では、このようなニーズに応えられるはずもありません。特に専門医制度も始まり、これまで以上に丁寧な教育が求められます。東京医科歯科大学精神科では、東京のど真ん中という地の利も活かし、大学がコーディネート機能を発揮し、都市型の病院から地域医療を担う病院、急性期からリハビリ、児童から老年期まで幅広く学べ、個々の関心に合わせ柔軟に対応できる豊富な関連施設と十分な実績と情熱を有した同窓会のメンバーで構成される専門医プログラムを充実させていければと考えております。
No health without mental healthと謳われて久しいですが、私が精神科医を志したころと比べて、身体医療における精神科の仕事は、各段にその量も質も増えております。また、近年はNo mental health without physical healthとも謳われています。今後はますます、開かれた精神科医療を実践していきたいと考えております。
研究も多様化、高度化してきており、一つの研究室、教室で出来ることは自ずと限界があります。学内外の本学にご縁のある優れた基礎・臨床の研究室との共同研究も活発化させ、トランスレーショナルな研究から、日常臨床の判断に直結する臨床研究まで進めていきたいと思います。私自身は、脳画像研究をツールの一つとして知・情・意の脳科学を推進してきましたが、知・情・意の科学は行動科学と呼ばれ、世界標準の医学部教育では不可欠な科目にもなっており、研究の成果を診療のみならず、教育にも応用できたらと考えております。また、ビッグデータ・AI時代の医療を本学でも掲げておりますが、私自身もAI技術を応用した精神医学・精神医療に取り掛かっております。
多様化しているニーズに応えるしなやかで層の厚い精神医療・精神医学の専門家集団たる本学精神科の発展、ひいては本学の発展のための人材育成に心血を注いでいく所存です。各方面からのご指導・ご支援を賜れれば幸いです。何卒、よろしくお願い申し上げます。