
このたび、平成30年4月1日付で心肺統御麻酔学分野・教授を拝命いたしました内田篤治郎と申します。何卒よろしくお願い申し上げます。
私は平成2年に本学医学部を卒業し、天羽敬佑教授の主宰する麻酔蘇生科に入局し、手術室麻酔の臨床にたずさわってまいりました。入局後数年で、槇田浩史・心肺統御麻酔学分野・前教授の指導のもと、鈴木章夫元学長執刀の手術の麻酔を担当させていただいたことなど、大変思い出深く感じますが、多くの外科系診療科の先生方から鍛えられ、今日の自分に至っていることを強く感じています。また、集中治療医学との接点もあり、研究面では人工呼吸関連のテーマで学位を取得いたしましたが、近年は、米国カリフォルニア大学サンフランシスコ校のMichael A. Matthay教授と共同で行ったARDSの血中バイオマーカーに関する研究に端を発した、周術期のバイオマーカーに関する研究や、周術期の凝固系モニタリングに関する研究などをテーマにしています。ここ数年はソニー株式会社が開発した新規血液凝固モニタリング装置に関する共同研究も展開しており、手術における止血機能の評価や適正で無駄のない輸血ができるような方法論の構築を目指しています。
最近は、医療におけるデータベース化が進み、毎日手術室で行われている一つ一つの手術症例の総和が、施設の実力の証明となる、そんな当たり前のことが、現実となりつつあります。周術期管理をめぐる環境も変化し、術前に早期から、エビデンスに基づいた介入を行うことにより、患者さんにできるだけ良いコンディションで手術に臨んでいただき、術中から術後にかけては、早期回復を念頭に置いたプロトコール管理を行っていくことが世界的な潮流となりつつあります。また、こういった取り組みを行うことにより臨床的なエビデンスを蓄積し、次世代の周術期管理に役立てていくことも期待できます。本学におきましても、現在、機能強化棟の建設により手術室の増室が計画されており、新しい術式を取り入れながら、効率よく、かつ安全に手術が行われるような環境を整備していくことが、大切であると認識しています。平成28年10月1日より、医学部附属病院手術部長を兼任させていただいている状況も生かしながら、患者さんに先進的な手術を良いコンディションで受けていただくことに全力を挙げていきたいと考えております。
また、若手麻酔科医を集め、養成していくという点におきましても、関東・東京地区は列強ひしめく激戦区であり、質・量ともに充実した研修・教育環境を構築していくことが、今後の発展のために不可欠です。集中治療分野との連携をはじめとして、外科系診療科とも情報交換を活発に行いながら、新しい流れを取り入れ、活気にみちた手術室を目指し、様々な取り組みを行っていきたいと考えています。今後ともご指導ならびにご支援のほど、よろしくお願い申し上げます。