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医学科・大学院医歯学総合研究科(医学系)

教授
准教授
講師
助教
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概要

研究・教育について

特に研究対象としているのは、すべての脊椎動物に具わり、動物の反射応答と運動機能の環境適応性に対して重要な働きをする小脳系のシステム、そして、高等哺乳動物で高度に発達してきている、目を自由に動かして物体の動きや立体的位置を正確に把握するための眼球運動システムです。これらのシステムは、お互いにオーバーラップするのに加え、両者とも臨床的に重要であり、例えば、小脳系のシステムの病変は、眼球運動を含めたあらゆる運動の失調と、平衡障害、そしてある種の認知機能障害という特異な症状をもたらします。

小脳は、複雑な襞構造と分子発現の縦縞構造によって多数の領域に区分され、領域により異なる神経回路網を脳幹との間に作り、さまざまな神経システムに組み込まれています。例えば小脳外側部などは大脳系のシステムにも組み込まれ、随意運動制御にかかわります。別の部位は随意的または反射的眼球運動のシステムに組み込まれています。従って、小脳の働きを理解するためには、小脳の区分の構築原理と区分に特異的な神経回路を正確に知ることが必要です。この問題に関して、マーカー分子による神経標識と三次元マッピング、電気生理学的方法、単一軸索再構築法などにより系統的に解析しています。

ネコ・サルで特に発達しているのは、視野内に興味のある物体が出現した時、眼を動かして対象をとらえるといった、随意的・指向的・高速の両眼が協調的に動く眼球運動です。この指向的眼球運動のシステムにおいて、ニ次元の視覚情報から三次元の運動情報への座標変換の中枢機構を明らかにするために、上丘および脳幹の眼球運動系と脊髄の頚部運動系において単一細胞活動の分析と形態学的解析を行っています。さらに眼球運動の制御と注視のメカニズムを明らかにするため、大脳前頭眼野から上丘および脳幹に至る眼球運動出力系の研究を行っています。

教育に関しては、医学科の授業としては、神経生理学導入、神経科学、生理学実習を担当しています。インペリアルカレッジ交換留学生、プロジェクトセメスター学生、MDPhDコース学生、一般の大学院博士課程学生の受け入れの実績があります。



  • ラット小脳核の三次元区画構築。分子発現と軸索投射からの解析。

    ラット小脳核の三次元区画構築。分子発現と軸索投射からの解析。

  • 発生・分化における細胞ベースでハイスループットスクリーニング

    小脳皮質のアルドラーゼCの縦縞模様状の発現(マウス)

  • 単一ニューロン軸索(苔状線維)の完全な再構築(ラット)

    単一ニューロン軸索(苔状線維)の完全な再構築(ラット)

業績

業績1

小脳皮質と小脳核の区分として、齧歯類における神経投射と分子発現パタンの観点からの厳密な実験結果に裏付けられた最も正確だと考えられる区分を提案している。
Sugihara I (2011) Compartmentalization of the deep cerebellar nuclei based on afferent projections and aldolase C expression. Cerebellum. 10: 449-463.

業績2

神経系の基本機能単位である1個のニューロンの軸索を完全に明らかにするという軸索再構築手法を完成させている。これにより、小脳内軸索投射構築の詳細を解析している。
Sugihara I (2011) Neuroinformatics. 9: 113-118. Quy PN et al., (2012) J. Comp. Neurol. 519: 874-899.

業績3

小脳の区分構築を理解するためには、その形成過程の解析も有用である。そのために必須となる胎児期の小脳プルキンエ細胞のマーカー分子としてFoxP2を見出した。
Fujita H, Sugihara I (2012) FoxP2 expression in the cerebellum and inferior olive: development of the transverse stripe-shaped expression pattern in the mouse cerebellar cortex. J. Comp. Neurol. 520: 656-677.

業績4

ネコ,サルを用いて、眼球運動の中枢神経制御機構を詳細に解析している。眼球の動きを目的の場所で止める機構を明らかにした。
Izawa Y, Suzuki H, Shinoda Y (2011) Suppression of smooth pursuit eye movements induced by electrical stimulation of the monkey frontal eye field. J Neurophysiol 106: 2675-2687.

業績5

さらに、眼球運動に際して左右の上丘を協調させる機構を明らかにした。
Takahashi M, Sugiuchi Y and Shinoda, Y (2010) Topographic organization of excitatory and inhibitory commissural connections in the superior colliculi and their functional roles in saccade generation. J. Neurophysiol. 104: 3146-3167.