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医学科・大学院医歯学総合研究科(医学系)

教授
助教
所在地
MAIL
分野HP

概要

研究・教育について

Hippo pathwayは、ショウジョウバエで見いだされたシグナル系です。細胞極性・増殖に関わる膜蛋白、裏打ち蛋白からなる上流部分、蛋白リン酸化酵素とその活性を制御する分子からなる中核キナーゼカスケード、リン酸化により負に制御される転写コアクチベーター(リン酸化されると細胞核から細胞質に移行します)からなる下流標的から構成されます。その機能不全は臓器の肥大、腫瘍化を起こします。研究の進展に伴い、Wnt、Notch、Hedgehog、TGFb、EGF系とのクロストークが明らかとなり、全体像はHippo曼荼羅とも呼ぶべき多元的、多面的様相を帯び始めていますが、基本構築は哺乳動物でも保存されています(図1)。しかし、ショウジョウバエの一つの分子に対応してヒトでは複数のホモログが存在する例(例えば、中核キナーゼカスケードの制御に関わるdRASSFに対応してヒトには6個のRASSF1-6が、下流標的Yorkieに対応してYAPとTAZがあります)も多く、ヒトではショウジョウバエ以上に複雑化しています。ヒトの種々のがん(固形腫瘍のみならず白血病も含みます)で、Hippo pathwayの機能低下、YAP・TAZの高発現が高頻度に認められ、しかも、YAP・TAZの活性上昇はがん細胞の間葉細胞化、幹細胞化を起こして臨床予後を悪化させるため、Hippo pathwayの機能を回復し、YAP・TAZを抑制することは、がん治療上、意味が大きいと考えられています。組織線維化、臓器肥大などの病態の抑制にも有意義と予測されます。他方でYAP・TAZは組織幹細胞の複製、分化制御に関係し、その活性は臓器損傷時の修復に必要であり、骨や筋肉の形成、脂肪細胞抑制に貢献します(図2)
。私たちは様々のアセイ系(図3、業績2に1例を示す)を工夫してHippo pathway、YAP・TAZの機能を刺激、抑制する薬物を探索しています。得られた候補薬剤を試薬として利用し、シグナル系の分子構築と生理的、病理的役割の理解を解明すると同時に、ひいてはがん、老化性筋委縮の治療に有効な薬剤の開発を目指しています。


  • Hippo pathwayがオンになるとYAP・TAZは抑制される

    Hippo pathwayがオンになるとYAP・TAZは抑制される

  • Hippo pathway、YAP・TAZは多彩な機能を担う

    Hippo pathway、YAP・TAZは多彩な機能を担う

  • YAPの細胞内局在を指標とするアセイ系の概念図

    YAPの細胞内局在を指標とするアセイ系の概念図

業績

業績1

Kudo T 他 The RASSF3 candidate tumor suppressor induces apoptosis and G1/S cell cycle arrest via p53. Cancer Res. (in press)
ヒトゲノムにはRASSFと総称される遺伝子が10個ある。そのうちRASSF1-6の6個は、ショウジョウバエdRASSFのホモログでSARAH領域という特徴的配列をもちHippo pathwayの中核キナーゼMST1/2に結合し、Hippo pathwayとの関連が深い。中でもRASSF1Aはヒトがんで重要な役割をもつ腫瘍抑制分子として著名である。本論文では、これまで解析されていなかったRASSF3が、MDM2(腫瘍抑制分子p53を分解する代表的なE3 ligase)の自己分解を促進し、p53の安定化を通じてゲノム安定性を保障することを明らかにした。

業績2

Bao Y 他 A cell based-assay to screen stimulators of the Hippo pathway reveals the inhibitory effect of dobutamine on the YAP-dependent gene transcription. J. Biochem. 150: 199-208 (2011)
Hippo pathwayが活性化すると転写コアクチベーターYAPはリン酸化され細胞核から細胞質に移行する。緑色蛍光タグ融合YAPを発現する細胞に各種の化合物を投与して、その細胞内局在を指標として、Hippo pathwayの活性を高進、抑制する薬物を探索する系を樹立した。本論文ではアセイ系を紹介し、得られた候補薬剤のYAPに対する作用について報告した。

業績3

Ikeda M 他 Hippo pathway-dependent and -independent roles of RASSF6. Sci. Signal. 2: ra59 (2009)
腫瘍抑制分子RASSF6はショウジョウバエdRASSFホモログでHippo ホモログMST1/2と結合し、しかも Hippo pathwayに依存せずに細胞死を起こす。MST1/2はRASSF6による細胞死を抑制し、RASSF6はHippo pathwayの活性化を抑制する。腫瘍抑制分子RASSF6と腫瘍抑制シグナルHippo pathwayが阻害しあうことは一見、矛盾しているが、ショウジョウバエのdRASSFとHippoについても同様の知見が得られている。一方でヒトRASSF1AはHippo pathwayを活性化しHippo pathwayを通じて細胞死を起こす。本論文では、外部からHippo pathwayを活性化する刺激(細胞ストレスなど)が入ると、 RASSF6とMST2複合体が乖離し相互阻害が解除されHippo pathwayとRASSF6を介する細胞死が並行して起こること、RASSF1AよりもRASSF6がdRASSFと類似の性状をもつことを示した。