当教室の教育方針は患者さんとのコミュニケーションを大事にし(Narrative Based Medicine)、臨床と研究能力のバランスのとれた医師の育成を目的としている。特に研究は医学の発展という大義や日本の医学研究のさらなる向上のためにも、当教室に課せられた社会的使命である。そのため教室所属の医師には専門医だけでなく博士号の取得を積極的に奨励している。
研究のテーマは「心血管疾患における炎症」であり、常にTranslational Researchを目指している。炎症は心移植後の急性・慢性拒絶反応、動脈硬化、心筋梗塞後のリモデリング、ステント再狭窄、心不全、心筋症等心疾患の幅広いステージでキーとなる機序である。細胞生物学、病理学、分子生物学、免疫学などの手法を駆使し、各種モデル動物での解析を行い、分子病態の解明と遺伝子治療を含めた新しい治療法の開発を行っている。現在ステント狭窄予防のための遺伝子(デコイ)溶出性ステントの開発を行っている。遺伝子多型と心血管病変の関係、歯周病、心筋細胞移植、心筋再生も当講座の研究テーマである1-18。
不整脈分野の研究では本学心臓電気生理学グループの研究に源を発し、当科では日本の不整脈界をリードしてきた。2011年には当科に不整脈センターも開設され、電気生理学にとどまらず新しい手法を用いた研究も試みている19-27。
高安病研究も歴史的に当科において長く続けられた研究である。当科に来院する同疾患の患者様は毎年増え続けている。高安病の疫学研究の他、HLA、バイオマーカー、画像診断について研究を行っている28-31。
その他、虚血性心疾患の治療法の開発35,39、重症心不全におけるLVAS療法32やβ遮断薬33,34、心筋症37、歯周病40、肺高血圧症38、サルコイドーシス、睡眠時無呼吸症候群36、新しい画像診断(CT、MR、FDG-PET)の研究30,39を行っている。
教育面では学部学生への各講義・実習と4年次のプロジェクトセメスターを担当している。当科の実験はモデルマウスを使い、個々の能力に応じて実験手技からプレゼンテーションの指導が行われる。発表会の成果のみで終わらず、熱意のある学生にはAHAなど海外の主要な学会での発表から論文執筆まで指導を行い、英文論文を上梓した学生を輩出している2,8,12。