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保健衛生学科・大学院保健衛生学研究科・大学院医歯学総合研究科(生体検査科学系)

教授
助教
所在地
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分野HP

概要

研究・教育について

複雑なシステムとしての生命機能のメカニズムを明らかにすることは医学・医療の進歩に大きく貢献すると期待されます。本分野は工学的な切り口で複雑なシステムの挙動のメカニズムを明らかにすること、そうした知識を応用することを目的としています。我々の視知覚は多様な外部環境下でも安定した外部情報の認知を可能とする柔軟さを持つ一方で刺激本体の特性以外にも周囲の状況、過去の経験や学習より変化するダイナミクスを実現していますが、そのメカニズムについて分からないことが多く残されています。これまで大脳皮質視覚野における物体表現、特に輪郭線と面ならびにそれらにより表される形の表現の神経機序、特に輪郭線統合の中間段階として輪郭線の折れ曲がりを表現する神経機構に注目して複眼的な視点から視知覚の情報処理メカニズムをニューロンや神経系レベルで探ってきました。動物の訓練、心理物理学的手法による行動解析、電気生理学的手法による単一細胞記録を主とする電気活動記録、イメージング技術を利用した神経回路網の解析、モデル解析によるシステムの作動機序等の研究を連携して行い、柔軟な視覚情報処理のメカニズムを明らかにすることを目標に研究を進めたいと考えています。

またこのような研究活動を通して新たな生体情報の検出、解析技術の開発、それらを応用する技術の開発、さらに資する次世代の人材の育成に努めたいと考えています。移り変わりの激しい時代にあって臨床検査技師もまた急速な科学技術、医療技術の変化に対応する能力を要求されます。さらに、これからは国内外で広く活躍できる人材が必要とされています。生体情報とその検出技術の背景、原理を良く理解し、既成の技術に頼るのではなく、その利点欠点をよく理解して新しい技術の開発を指向できる人材を育成します。学生諸氏にはプロフェッショナルな技術を身につけるだけでなく、幅広い基礎知識と、課題解決の為に自ら知識、技術を系統立てて収集するノウハウを学び、今後国内外の様々な方面で活かせるような力を養ってほしいと思います。


  • 第二次視覚野での輪郭線の折れ曲がりの表出(業績1)

    第二次視覚野での輪郭線の折れ曲がりの表出(業績1)

  • 折れ曲がり表出のための線形―非線形モデル(業績1)

    折れ曲がり表出のための線形―非線形モデル(業績1)

  • 物理モデルのパラメータ変更により表現した種々の破壊(業績4)

    物理モデルのパラメータ変更により表現した種々の破壊(業績4)

業績

業績1

輪郭線統合の中間段階として輪郭線の折れ曲がりを表現する神経メカニズムを探る。注視課題を遂行中のサルの第二次視覚野より単一細胞外記録を行い、多数の細胞が受容野を横切るような折れ曲がり刺激に選択性を示すこと、シングルエンドストップ抑制により半直線を表すことを見出した。線形―非線形モデル解析からその選択性が半直線成分に対する興奮性ないし抑制性の反応の線形和によることを明らかにした。第一次視覚野の反応を同じ刺激を用いて入力源の寄与を検討し、類似してメカニズムが働くことを示した。麻酔下で第二次視覚野より長時間記録し、受容野の構造と折れ曲がり選択性の関係より、折れ曲がり刺激が半直線の緩やかな組み合わせによることを示した。

業績2

大脳皮質視覚野における面の表現および輪郭線の表現の神経メカニズムを探る。麻酔下のネコで内因性光計測を行い、一様な面刺激に反応する領域を18野内に見出した。注視課題遂行中の動物を用いて機能的MRI計測を行い、モンドリアン型色刺激により色表現に関与する領域が側頭葉前部にパッチ状に存在することを示した。現在、物体面の質感表現の神経メカニズムを明らかにする為に、弁別課題による行動解析を行っている。

業績3

明るさ知覚の文脈依存性の神経メカニズムを第一次視覚野に探る。第一次視覚野のニューロンから単一細胞外記録を行い、直列な線分間に働く文脈依存性の作用と合致する反応強度の変化を見出した。サルに明るさ弁別課題を行わせ、心理物理学的手法よりヒトと同等の修飾作用が生じること、その修飾作用が空間注意、長期の知覚学習に影響されることを明らかにした。弁別課題遂行中のサル第一次視覚野より単一細胞外記録を行い、平均的な修飾作用の大小と課題の成績がよく合致することを発見した。これらの結果は第一次視覚野が視知覚レベルの修飾作用に関与することを示した。

業績4

粘弾塑性を表現する数学モデルを用いた仮想作業環境の構築と,その環境を応用した医療トレーニングおよびシミュレータシステムの構築。内部に水分を含む生物の細胞は弾性と粘性を合わせた物理特性を持ち、この生体組織に採血などの侵襲的医療行為を施した時に弾性限界内での可逆的変形から破断への連続的な変化の中でこれらを反映した反力を生じ、医療技術者はそれぞれの手技に応じた操作感覚を得る。これを医療トレーニングおよびシミュレータで再現するために、適切な数学モデルと力覚提示システムの基礎開発を行った。

業績5

人工現実感の技術を応用して、脳低温療法時における脳内の温度分布をシミュレートし可視化する技術を開発する。従来の脳低温療法では脳内の温度を均一であるという仮定の下に全体を同一の条件で冷却しているが、本システムではフーリエの熱伝導モデルを採用し、脳および周辺組織における熱容量や代謝性産熱などの既知パラメータを考慮して温度分布を提示することを可能にした。このシミュレーションの有効性を確認するために、人体頭部の各組織の形状を模擬した模型モデルを中心とする実験システムを開発している。