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医学科

大学院医歯学総合研究科 国際環境寄生虫病学分野 岩永史朗教授就任挨拶

iwanaga

  教授就任の挨拶と抱負

  この度、平成29年4月1日付けで大学院医歯学総合研究科国際環境寄生虫病学教室・教授を拝命いたしました岩永史朗と申します。何卒宜しくお願い申し上げます。
  私は平成6年に九州大学農学部を卒業後、平成11年に同大学大学院農学研究科・生物化学教室において学位を取得し、神戸大学・鳥取大学・三重大学において多くの学生・共同研究者と共に衛生動物学・寄生虫病学分野の教育・研究活動に従事してきました。最初に赴任した神戸大学では学生時代に身につけた生化学的手法を使い、吸血性マダニ由来の生理活性物質の探索・機能解析を行い、血液凝固阻害物質・血小板阻害物質等の分子を同定し、吸血生理の分子基盤解明を進めました。また、この過程で発見した血管拡張物質が宿主からの遺伝子水平伝播により獲得されたことを示し、吸血性マダニ(動物)の進化について一石を投じることができました。神戸大学在籍時にはオランダ・ライデン大学医学部に留学する機会を得、これをチャンスに研究テーマを大きく変え、マラリア原虫の分子生物学研究をスタートしました。ライデン大学ではゲノム解析と遺伝子組み換え技術を使い、染色体分配を司るセントロメアを同定し、これと共にテロメア・複製開始起点を組み込み、マラリア原虫人工染色体の開発に成功しました。帰国後は人工染色体を遺伝子操作ツールとして利用し、未知とされていたマラリア原虫の転写因子を発見して、原虫の複雑な生活環の基盤となる転写制御機構を解明しました。更に研究の場を研究室だけでなく流行地にも展開し、タイ-ミャンマー国境地域に自身のフィールドサイトを設置し、患者由来感染血液から薬剤耐性マラリア原虫株を樹立後、これより人工染色体技術を用いた薬剤耐性遺伝子迅速同定法を使って耐性遺伝子を同定しました。現在もマラリア原虫の転写制御、薬剤耐性の研究を継続しており、マラリア学の進展に貢献することを目的に日々、研鑽しています。
  衛生動物学・寄生虫学分野は近年の国内発症数の減少と共に縮小傾向にあることは否めません。しかし昨今の蚊・マダニ媒介性ウイルス感染症の国内でのアウトブレイクや、顧みられない熱帯病の克服に向けた国際的機運の高まりなどを見ると本分野の活性化は重要な責務であると感じています。また、前任の太田伸生教授が推進したガーナ・野口記念医学研究所と本学との国際共同プロジェクトは本学のみならず、我が国の国際感染症研究拠点としての重要性から引き続き推進しなければならないと考えています。これらを達成するためには学生教育を充実化して将来を担う人材育成を進めるとともに、教室スタッフと緊密に協力し、良い研究成果を生み出していくことだと考えています。若輩者ですが、教室・本学の発展のために尽力する所存であり、皆様方の暖かいご指導とご支援を賜れれば幸いに存じます。

医歯学総合研究科国際環境寄生虫病学分野 教授 岩永史朗