Now Loading...

医学科・大学院医歯学総合研究科(医学系)

教授
准教授
講師
学内講師
助教
所在地
MAIL
分野HP

概要

研究・教育について

 耳鼻咽喉科学は、耳、鼻、口腔、咽頭、喉頭の耳鼻咽喉科領域のみならず、気管・食道も含め、脳神経外科、眼科、歯科が扱う領域も含めて広範な頭頸部領域の疾患を扱い、対象疾患の診断ならびに外科的・内科的治療による治療を目標に研究、教育を行っています。
 研究について特筆されるのは、聴覚・平衡障害などの感覚器障害、上気道(鼻腔)アレルギーなどの免疫疾患、言語・発声・嚥下などの機能的障害などの診断、治療、リハビリテーションなどです。外耳道癌や脊髄小脳変性症など、多施設と比べきわめて多数の症例数を持つ疾患についての臨床研究も積極的に行っています。15の学外施設と研修医の研修で人事交流を行っており、当分野の現在の教室員は、学内20名、学外33名です。また、5名の大学院生(博士課程)が在学しており、難聴遺伝子、聴器の比較解剖・発生、実験動物の内耳組織、眼球運動解析と重力認知、平衡覚の電気生理、外耳道癌の免疫染色、人工内耳のマッピング手法の改善などをテーマに研究中です。平成29年度は、医員と研修医を除いたスタッフ6名中4名、さらに学外でも1名が研究資金を獲得しており、研究内容が高く評価されています。海外施設とも緊密な交流関係を構築しており、留学先としては現在米国NIH、Vanderbilt大学、Ohio州立大学などがあります。
 医学生・初期研修医の教育については、解剖学・生理学といった基礎医学の理解から臨床へとシームレスにつながる教育を心掛け、このようなコンセプトでのクルズスや積極的な臨床参加型の教育が高く評価されています。耳鼻咽喉科専門医へ向けた教育については、耳鼻咽喉科・頭頸部外科全領域に関して必要十分な知識・能力を獲得したうえで、サブスペシャリティー領域においてさらに高度な能力を得られるよう、各種専門外来と手術チームでの教育を行っています。また、研究と臨床はリンクしており、研究から臨床能力へのフィードバックが得られるように、基礎・臨床研究への参加も奨励しています。
 診療に関して、外来での診療は、午前中はすべての疾患を対象とする一般診療、午後は専門外来として、アレルギー・副鼻腔外来、嚥下外来、音声外来、めまい外来、中耳炎外来、頭頸部腫瘍外来、嚥下外来、難聴・耳鳴・補聴器・顔面神経外来を開設し、それぞれの疾患の専門的かつ最新の診療を行っています。手術診療では、耳科手術への内視鏡導入による低侵襲化や、外耳道癌・鼻内視鏡下頭蓋底手術などの高難度手術に加え、音声外科や嚥下手術なども行っています。頭頸部外科・脳神経外科・形成外科と共同で、各種頭蓋底手術も多数手がけています。

  • FM1-43取込を欠くTmc遺伝子改変マウス有毛細胞の電顕像

    FM1-43取込を欠くTmc遺伝子改変マウス有毛細胞の電顕像

  • 埋め込み型骨導補聴器インプラント(左)とサウンドプロセッサー(右)

    埋め込み型骨導補聴器インプラント(左)とサウンドプロセッサー(右)

  • 喉頭(声門)内に嵌頓した薬パッケージ異物

    喉頭(声門)内に嵌頓した薬パッケージ異物

業績

業績1

難聴のみを主症状とする非症候群性遺伝性難聴では、すでに50以上の原因遺伝子が同定されています。当分野では、遺伝学的解析によりGJB2、WFS1、DFNA5変異例やミトコンドリア1555変異例などの聴平衡覚機能の特徴を明らかにしました。また、難聴の原因遺伝子としても重要なミトコンドリアDNA変異の網羅的検出法を確立しました。さらに、次世代シーケンサーや脳機能画像も用いて、分子レベルでの難聴発症機構、脳の中枢での聴覚機能の解明や治療を目標とした研究を行っています。(Laryngoscope 2010, 2009, Acta Otolaryngol 2011, 2010, J Hum Genet 2010)。

業績2

マウスの研究で、有毛細胞における機械刺激を電気信号に変換するチャネルとしてTmc1遺伝子およびTmc2遺伝子が構成要素である可能性を示唆しました(画像 1, J Clin Invest 2011)。また、難聴遺伝子であるvlgr1が、蝸牛外有毛細胞の感覚毛の基部に発生・分化の時期に発現し、聴覚発達に必須な遺伝子であると証明しました(Neurosci Lett 2009)。さらに、ラットの聴覚中枢(台形体)のシナプス前部にAMPA受容体が発現しており、三量体Gタンパク質を介する電位依存性カルシウムチャネルの阻害により、興奮性シナプス伝達を抑制することを証明しました(Proc Natl Acad Sci USA 2005)。

業績3

めまい・平衡障害は、現在を含めて3名の当分野代表者が専門分野としていたため、40年近くの診療・研究実績があります。この歴史的背景から、代表的なめまい病変のメニエール病の10年以上の長期の診療成績を解析し、診療に役立ててます(Acta Otolaryngol 2012)。目に見えませんが、コミュニケーション障害として、難聴は大きなハンディキャップとなります。当分野では、難聴の診断から治療まで、総合的な診療を行っており、我が国で始めて埋め込み型骨導補聴器の埋め込み手術を行いました(画像2, 日耳鼻会報 2003)。

業績4

国民病とも言われるアレルギー性鼻炎の治療に、当分野では病態に応じて、免疫療法を含む投薬治療、アルゴンプラズマによる手術治療を施行し、特に症状として問題となる鼻閉について、短期的かつ長期的な有効性を報告しています(J Med Dent Sci 2010, Auris Nasus Larynx 2005)。また、難治性の鼻の疾患として、好酸球性副鼻腔炎、リンパ腫等についても、総合的な診療を行っています(耳鼻臨床2012)。

業績5

腎不全の原因として頻度の多いIgA腎症には、口蓋扁桃摘出術が腎不全の進行を阻止するために有用で、該当症例では手術が施行されます。当分野では、腎臓を移植された方の移植腎に、発症したIgA腎症の手術においても、口蓋扁桃摘出の豊富な経験があり、腎障害の進展予防に有効と報告しています(日耳鼻会報 2012)。

業績6

眼球運動の三次元解析による重力認知機能評価のパラメータを開発し、臨床適用を進めています(Equilibrium Research 2008, Otol Neurotol 2011, Auris Nasus larynx 2012, Auris Nasus Larynx 2013)。これにより、疾患による平衡失調だけでなく、加齢変化による転倒防止などへのアプローチも進めています。

業績7

平衡神経科学領域のgold standardである温度刺激検査に、頭位変化と数学的解析を組み合わせることで、経時特性を評価する新たなパラメータを開発し、臨床適用を進めています(J Vest Res 2011)。