大学院医歯学総合研究科眼科学分野として、眼科疾患の原因を解明し新しい診断方法と治療法を開発する研究を行っております。特に、失明原因として重要な様々な眼疾患に対し、その病態に即した基礎と臨床を融合するトランスレーショナルリサーチ行い、国際的評価の高い研究の発信を行っております。
網膜・脈絡膜疾患関連では、実験近視動物モデルを用いた近視発症と進行のメカニズム解明、加齢黄斑変性における血管新生メカニズムの解明について研究を行い、各疾患の病態の完全解明を目指すとともに新規治療の開発を行なっています。近年では近視を実験的に誘導する動物モデルの眼球に線維芽細胞を移植することで眼球の外層であり支持組織である強膜へのコラーゲンの供給を促すことで近視の進行を抑制できることを明らかにしました。この事実は近視に対する新規治療として現在注目を浴びています。そのほかにも、近視性脈絡膜新生血管に対する光線力学的療法やVEGF抑制治療、高侵達OCTを用いた強度近視の網膜・視神経の3次元的画像解析、3D MRIを用いた強度近視眼の3次元的眼球形状解析、強度近視および近視性脈絡膜新生血管発生に関連する遺伝子の解析など多岐にわたる種々の研究を精力的に行っています。
ぶどう膜炎関連では、眼内炎症性疾患の眼内液・眼内組織を用いた網羅的迅速PCR診断システムの開発と治療、レトロウイルス感染による眼病変の病態解明と診断法の開発と治療、眼内リンパ腫の免疫学的・分子生物学的診断システムの開発と治療などのプロジェクトが進行中です。
また、2004年からはじまった初期臨床研修義務化のなかで、私達は本学病院臨床教育研修センターと協力して、専門的な眼科研修を行うためのプログラムを設けております。一般的な眼科疾患の診療を深く経験できるとともに、各種レーザー治療や外眼部手術、白内障手術などの眼科医にとって必須となる手技の習得を目指します。同時に各自の専門領域を選択し、指導医のもと学会発表・論文執筆を行い、日本眼科学会眼科専門医の受験資格を取得することが可能です。
そして、大学院進学についても、病的近視の発症メカニズムや新規治療法の開発、加齢黄斑変性症における血管新生、難治性ぶどう膜炎の発症機序、緑内障の新規治療法の確立、糖尿病網膜症に対する新規画像診断研究などのテーマを中心に基礎から臨床まで幅広く研究活動を行っているため指導体制は整っています。また、臨床を行いながら博士号を取得できる社会人大学院のプログラムもあります。
Morgan I, Ohno-Matsui K, Saw SM. Myopia. Lancet. 379:1739-1748, 2012
Ohno-Matsui K, Lai TY, Lai CC, Cheung CM. Updates of pathologic myopia. Prog Retin Eye Res. 52:156-187, 2016
Ohno-Matsui K. Parallel findings in age-related macular degeneration and Alzheimer’s disease. Prog Retin Eye Res. 30(4):217-238, 2011
Yoshida T, Ohno-Matsui K, Ichinose S, Sato T, Iwata N, Saido TC, Hisatomi T, Mochizuki M, Morita I. The potential role of amyloid-beta in the pathogenesis of age-related macular degeneration. J Clin Invest 115:2793-2800, 2005
Mochizuki M, Sugita S, Kamoi K. Immunological homeostasis of the eye. Prog Retin Eye Res. 33:10-27, 2013