現行の主な研究テーマは以下の通りです。
・蛋白質の細胞内輸送と品質管理のクロストーク機構の解明
・新規測光法、イメージング手法の開発
・細胞骨格動態調節機構の解明
・吸入麻酔薬の動態可視化と作用機構の解明
神経細胞軸索内における細胞質性蛋白質の輸送は特に遅い軸索輸送とよばれ、その分子機構は長い間謎とされてきました。この輸送は微小管依存性にキネシン1をモーター分子として行われており、最近の私たちの成果としてこの過程にシャペロン分子が関与することがわかってきました。しかしながら、シャペロン分子のように非特異的かつ弱い相互作用を介して機能する分子群を、生体内で解析する適切な方法がありません。研究をさらに進めるために、弱い相互作用を含めた細胞内分子間ネットワークの変化を検出する新規測光法の開発が不可欠と考え、努力を続けています。また、遅い軸索輸送で運ばれる細胞骨格蛋白質(アクチンやチュブリン、ニューロフィラメントなど)は、ほかの一般的な細胞質性蛋白質群と異なり、どのようなメカニズムで輸送をはじめとするその動態が制御されているかは全くわかっていません。私たちは、新しい実験系によりこの問題に迫りつつあります。また、この実験過程において、可能な限り染色や標識を行わず、生きた状態に近い標本を、できる限り高分解能で観察する新規顕微鏡の存在が望まれます。この開発にも着手しています。以上のほか、新規顕微測光法による吸入麻酔薬の局在の可視化成功を契機として、その神経興奮制御機構に迫る努力を行っています。
博士·修士課程大学院生の研究指導をはじめとする大学院教育、プロジェクトセメスター、研究者養成コースなど、実際に研究活動を行う機会では、分子細胞生物学や生物物理学を含めた最新かつユニークな高等教育の場をつくるよう心掛けています。また学外講師の招聘による大学院特別講義の開催のほか、修士課程向け人体形態学(科目責任者)の講義の一部を担当しています。学部教育としては、医学科第二学年の神経解剖学の講義·実習、保健衛生学科検査技術学専攻第二学年の人体構造学実習の一部を担当しています。
Nagashima Y, Suzuki T, Terada S, Tsuji S, Misawa K. In vivo molecular labeling of halogenated volatile anesthetics via intrinsic molecular vibrations using nonlinear Raman spectroscopy. J Chem Phys, 134, 024525 (2011). Selected for the January 2011 issue of JCP: BioChemical Physics.
記者会見発表/「生きた神経細胞内で麻酔ガスの分子を検出することに成功 ~神経信号伝達に対する麻酔ガスの作用機構解明へ新たな手法~」(JST、東京農工大学、東京科学大学(旧:東京医科歯科大学)の共同発表)
日経BP社バイオテクノロジージャパン(BTJ)、日刊工業新聞、日刊工業新聞Business Line、科学新聞に記事掲載。
Hoshino M, Tsujimoto T, Yamazoe S, Uesugi M, Terada S. Adhesamine, a new synthetic molecule, accelerates differentiation and prolongs survival of primary cultured mouse hippocampal neurons. Biochem J. 2010 Mar 29; 427(2):297-304.
Comment in BJ Cell Spotlightに記事掲載。
Terada S, Kinjo M, Aihara M, Takei Y, Hirokawa N. Kinesin-1/Hsc70-dependent mechanism of slow axonal transport and its relation to fast axonal transport. EMBO J. 2010 Feb 17; 29(4):843-854.
Download ranking in EMBO J.、Faculty of 1000 Biology, Biochemistry, Structural Biology, Cell Biology, All of Biologyでトップ10ランキング入り、記事掲載。
Terada S, Kinjo M, Hirokawa N. Oligomeric tubulin in large transporting complex is transported via kinesin in squid giant axons. Cell. 2000 Sep 29; 103(1):141-155.
Terada S, Nakata T, Peterson AC, Hirokawa N. Visualization of slow axonal transport in vivo. Science. 1996 Aug 9; 273(5276):784-788.