Now Loading...

医学科・大学院医歯学総合研究科(医学系)

教授
助教
特任講師
所在地
MAIL
分野HP

概要

研究・教育について

医学教育では、医学科2年生の感染基礎講義および実習を担当し、細菌、真菌、ウイルスなどの病原微生物の構造、増殖、変異、病原性、予防、診断、治療について、総論的および各論的学識と手技の習得をめざしている。医学科4年生プレ・クリニカルクラークシップの感染・血液・検査講義では、感染の成立を理解し、症例をとおして発熱等の症状を主訴とする患者の診察法を習得することをめざしている。研究面では、最先端のウイルス学および関連する分子生物学的研究を展開推進している。ウイルスの複製が細胞因子に依存していることは周知の事実であるが、個々のウイルスが各複製段階でどのような細胞因子を必要としているか、どのような細胞側制約因子をウイルスが無力化しているかについては、未知の部分が多い。当分野では、従来なされてきたウイルス因子との相互作用にもとづく探索法ではなく、発現クローニング法を基軸とした新しい研究方法を開発しHIV研究に用いることで、HIV複製を制御する新たな細胞因子を発見しており、それをもとにした新規治療法開発の基盤を築くことをめざしている。HTLV-Iは感染後40年以上経過してから成人T細胞白血病(ATL)を起こす癌ウイルスであり、ウイルスゲノムにコードされるTaxが転写因子NF-B活性化をとおして細胞不死化、transformationを起こす。ところが白血病を発症するのは感染者の5%以下に限られ、白血病細胞ではしばしばTaxが発現していないことがわかっている。この理由として、ヒト免疫機構がTax発現細胞を標的とすること、Taxに代わる細胞因子の変化による細胞癌化が想定され、我々は細胞リン酸化酵素NF-B Inducing Kinase (NIK)の過剰発現と悪性形質への関与を初めて報告した。この研究はその後、持続的NF-B活性化によって発現誘導されるA20による癌細胞の生存維持、ウイルスが関与しない他の癌細胞の生存戦略の解明にも発展している。



  • 当分野で行っている発現クローニング法の概念図。

    当分野で行っている発現クローニング法の概念図。

  • 遺伝子操作によりHIV-1感染感受性が低下した細胞の蛍光像

    遺伝子操作によりHIV-1感染感受性が低下した細胞の蛍光像

  • 癌細胞における細胞死抑制のメカニズムと意義。

    癌細胞における細胞死抑制のメカニズムと意義。

業績

業績1

成人T細胞白血病(ATL)細胞およびホジキンリンパ腫細胞でリン酸化酵素NIKが過剰発現し、IB kinase (IKK)複合体と細胞転写因子NF-Bの持続的活性化と悪性形質発現を起こしていることを明らかにした。NIKはラット線維芽細胞株に発現させると悪性形質転換し、それがNF-kB依存的であることも示した。このことは、リン酸化酵素であるIKKもしくはNIKを治療標的分子候補と位置付けるものである (Blood, 2008)。

業績2

成人T細胞白血病(ATL)細胞およびHTLV-I感染細胞の細胞死抑制戦略は不明である。これらの細胞では恒常的NF-kB活性化に伴ってA20がmRNAおよび蛋白レベルで過剰に発現し、それが細胞死抑制の要因となっていることを初めて明らかにした。高発現しているA20をノックダウンすることで、細胞死を誘導するプロテアーゼであるカスパーゼの活性化、アポトーシス関連細胞表面マーカーの出現などが惹起された (Leukemia, 2016)。

業績3

病原体認識により始まるインターフェロン(IFN)産生の負の制御メカニズムを、世界で初めて明らかにした。二重鎖RNA刺激あるいはRNAウイルス感染により、TBK1、IKKepsilonが活性化して Interferon Regulatory Factor 3 (IRF3)をリン酸化し、IRF3が核移行してIFNbetaの転写を活性化する。プロリルイソメラーゼPin1は、初期活性化後にIRF3に作用してその活性化を抑制することで、持続的なIRF3活性化によるIFN過剰産生を防いでいる (Nature Immunology, 2006)。

業績4

世界的に流行しているエイズの原因であるHIVは、simian immunodeficiency virus(SIV)が「種の壁」を乗り越え病原性を示すHIVへと変貌を遂げた歴史的背景が明らかとなってきている。しかし、SIVがヒトに感染し、病原性を示すようになった原因は、未だ解明がなされていない部分が多い。これまでに、SIVがヒトへ感染伝播する際に作用する、3つのSIV増殖抑制ヒト因子を同定した。その内の2つは、HIVがヒトに感染する際にはHIV増殖抑制効果を示さないことから、サルからヒトへ感染する際に効力が発揮される宿主特異的なメカニズムであることが考えられる (J Biol Chem. 2005, J Virol. 2007, Retrovirology, 2012)。

業績5

HIV-1 VpuはヒトのBST-2(別名tetherin)タンパク質の機能を阻害し、ウイルスの放出を促進している。我々は、両分子が膜貫通領域を通じて結合すること、さらにサルとチンパンジーのBST-2とは細胞内領域を介して結合していることを見出した。そしてこれらの結合はVpuのBST-2阻害機能にとり、必要条件であることを示した。HIV-1のVpuがサルやチンパンジーのBST-2と結合する事実は、HIV-1の祖先ウイルスがサルや類人猿に感染していたことを示す痕跡であり、HIV-1発生過程のウイルス進化を読み解くカギとなる可能性を提起した (Yoshida et al, JVI, 2013)。