現在取り組んでいる主な研究テーマは、(1)健康水準の格差とその背景要因の解明、(2)地理情報システムによる健康事象と環境諸条件の相互関連性解析手法の開発、(3)生態系変容とその健康影響評価、(4)社会文化的健康決定要因の作用機序の解明、(5)健康開発地域プログムの参加型評価、(6)情報通信技術を活用した保健医療福祉プログラムの開発とその評価です。
学部教育では、担当科目に加えプロジェクトセメスターにおいて、国際社会における保健医療および環境について指導しています。様々な国や地域における健康に関わる諸課題とその解決、保健医療分野における国際交流、援助についての知識、技術、態度を獲得し、国際社会の中で自らの行う医療を理解できる医師の輩出をめざしています。
大学院教育においては、国際保健医療協力の研究開発と実践を担うリーダーとしての幅広い視野と見識、総合的な判断力を有する人材の育成をめざしています。国際機関とも協力し、研修プログラム、実習、国際共同研究への参加の機会を用意しています。
パブリックヘルスリーダー養成特別コースでは、アジア・太平洋ならびにその他の地域の主として公的機関に属する環境社会医歯学の専門家を受け入れ各国で指導的役割を担う人材を育成しています。授業は、外国人留学生と環境社会医歯学系の博士課程大学院生が同時に参加し、英語による講義、演習、研究指導を行なっています。各国の公的機関やWHOとの連携をはかり、国際的な視野で能力を発揮できる人材の養成をめざしています。
「結核治療における医療コストと世帯の経済負担」
結核が蔓延するカンボジア王国において、異なる管理方法を用いた直接監視服薬治療(DOT)による診断から治療までの患者および医療提供者の経済負担を調査しました。入院を伴わないDOTプログラムは、入院を伴プログラムと比較して患者、医療機関ともに経済負担が低く、治療予後は入院の有無に因らず基準以上の治癒率を達成することを実証しました。
[International Journal of Tuberculosis and Lung Disease 2012; 16:828-834]
「アフガニスタンカブール県における母親の紛争経験と外傷後ストレス障害(PTSD)」
長期の戦乱から復興段階にあったアフガニスタン・カブール県において、幼児の母親1400名を対象に戸別訪問を行い、武力紛争に関わる体験と紛争に起因する生活の困窮に関連する外傷後ストレス障害(PTSD)について調査を行いました。対象者の29.8%にPTSD症状が認められ、PTSD症状の有無は、母親自身の爆撃体験、家族の負傷および死亡、食料の欠乏を含む紛争に因る基本的生活困窮と強い関連があることを明らかにしました。
[Health and Quality of Life Outcomes 2008; 6(29)]
「アジアの都市貧困層の健康確保の脆弱性と介入策」
都市の健康決定要因において社会経済的条件は複合的な作用をもたらしている。健康確保の機会における格差の影響を最小限とするための取組として、健康確保の意思決定への市民の参画、地域社会の社会的連携の強化、行政の支援的関与、都市間相互学習の要因の重要性を論述しました。
[Addressing health vulnerabilities of the urban poor in the “new urban settings” of Asia. The Urban Ttransformation, Earthscan, 2012]
「アジア太平洋地域の健康政策を重視する都市の連携」
健康を重視する都市政策を展開する都市間の連携組織が形成された背景、組織運営、都市間連携の成果を分析し、アジア太平洋地域の都市の多様性をふまえ、都市の独自性を反映させる健康開発における新しい都市連携の機能を明らかにしました。
[A network of Healthy Cities in Asia and the Pacific: The Alliance for Healthy Cities. Asian Perspectives and evidence on Health Promotion and Education, Springer, 2011]