本講座では研究・教育活動を通し、難治性炎症性腸疾患の制圧に向けて、独自の視点に基づく次世代の基礎・臨床研究を推進する優れた臨床研究者を育成することを目的としている。本講座設立と同時に厚生労働科学研究費補助事業難治性疾患克服研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究 (渡辺 守 班長)」及び「難治性腸管吸収機能障害 Microscopic colitisに関する調査研究 (渡辺 守 班長、分担研究者:岡本・土屋)」における全国規模の疾患治療開発・戦略構築の中心組織として活動を指揮・先導し、当該領域における学術的進歩に少なからず貢献してきた。本講座における教育・研究の根底を成す基本理念は、“臨床現場から抽出した課題を基に病因・病態解明を指向した基礎研究を展開し、その成果を最終的に臨床現場へと還元する「クリニカル・サイエンス」の追求”であり、従ってベッドサイドとの日常的かつ密接な接点を最大限に重視した活動を展開して来た。
上記コンセプトを消化器病態学講座と共有し、密接な連携関係を構築することにより、基礎病態の解明から診断・検査法の工夫、新規治療法の開発に至る幅広い領域で以下の課題を掲げ、教育・研究活動を推進している。
1)炎症性腸疾患の免疫学的機序の解明とそれを基盤にした治療法開発
2)消化管再生医学の臨床応用
3)炎症粘膜の修復応答における分子シグナルの解明と分子標的治療の確立
4)難治性潰瘍に対する細胞・組織移植技術の確立
5)腸管細菌叢-上皮間クロストークによる炎症持続のメカニズム解明と新規免疫調節薬の開発
1)免疫学的機序を基盤とした炎症性腸疾患の治療開発
2)炎症性腸疾患に対する免疫調節薬の投与スケジュール最適化法の開発
3)炎症性腸疾患におけるMRエンテロクリシス等の低侵襲的検査法の開発
4)炎症性腸疾患におけるダブルバルーン内視鏡を用いた小腸病変の診断・治療法
Yui S, Nakamura T, Sato T, Nemoto Y, Mizutani T, Zheng X, Ichinose S, Nagaishi T, Okamoto R, Tsuchiya K, Clevers H, Watanabe M. (2012) Functional engraftment of colon epithelium expanded in vitro from a single adult Lgr5⁺ stem cell. Nat Med. 18(4):618-23.
Oshima S, Turer EE, Callahan JA, Chai S, Advincula R, Barrera J, Shifrin N, Lee B, Benedict Yen TS, Woo T, Malynn BA, Ma A. (2009) ABIN-1 is a ubiquitin sensor that restricts cell death and sustains embryonic development. Nature. 457(7231):906-9.
Tsuchiya K, Nakamura T, Okamoto R, Kanai T, Watanabe M. (2007) Reciprocal targeting of Hath1 and beta-catenin by Wnt glycogen synthase kinase 3beta in human colon cancer. Gastroenterology. 132(1):208-20.
Okamoto R, Watanabe M. (2003) Prospects for regeneration of gastrointestinal epithelia using bone-marrow cells.(Review) Trends Mol Med. (7):286-90.
Okamoto R, Yajima T, Yamazaki M, Kanai T, Mukai M, Okamoto S, Ikeda Y, Hibi T, Inazawa J, Watanabe M. (2002) Damaged epithelia regenerated by bone marrow-derived cells in the human gastrointestinal tract. Nat Med. 8(9):1011-7