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医学科・大学院医歯学総合研究科(医学系)

教授
講師
助教
所在地
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分野HP

概要

研究・教育について

(研究)

当教室では、研究は法医学的な応用を視野に入れながら、科学の発展に寄与できるように取り組んで行きたいと考えている。特に法医実務に於いて頻繁に遭遇し、問題となることが多い薬毒物について、その毒性機構を分子・細胞のレベルで検討することで、臓器・個体レベルでの障害を理解する基礎となる知見を得ることを目的としている。法医実務で有用なマーカーを得ることが最終的な目標である。具体的には覚醒剤、コカイン、硫化水素、アルコール、ヒ素、などによる細胞障害の機構の解明を目標として、生化学・分子生物学・細胞生物学的手法を適宜用いて研究している。主として培養細胞を用いて研究しているが、これは緑色蛍光タンパク質GFPを用いた細胞内オルガネラ・タンパク質の動態解析、各種蛍光プローブによる活性酸素等の傷害因子の評価が容易であり、また遺伝子の過剰発現・RNA干渉法を用いた遺伝子発現抑制が簡便に行えることから、毒性発現の分子機構解析に適しているためである。培養細胞で得られた結果を動物個体で検証することも重要である。ラットなどを用いた薬毒物投与実験で、主に肝臓・心臓・脳・眼球などの障害を解析している。設備としては安全キャビネット、ガスクロマトグラフ接続質量分析計、リアルタイムPCR解析機器、蛍光顕微鏡、蛍光プレートリーダーなどを保有している。

(教育)

学部学生には研究の基本手技をマスターすることと、法医実務の実際を理解することを目標にしてもらう。修士課程大学院生には研究では学会などで対外的に公表可能な厳密な結果を得ること、法医実務に於いては実際に解剖業務の補助を行えることを習得目標としている。博士課程大学院生には研究では原著論文として公表可能な新規な事象を発見しそれを厳密に証明すること、法医実務に於いては、医師は基本的な事例に於いては執刀と鑑定書作成が基本的に出来るようになること、医師以外は解剖補助や病理・薬物検査などの業務が行えるようになること、を課題としている。



  • 当分野の研究概要

    当分野の研究概要

  • 覚醒剤メタンフェタミンにより細胞内に空胞が形成される

    覚醒剤メタンフェタミンにより細胞内に空胞が形成される

  • 工業用アルコール1−ブタノールは激しいブレッビングを惹起する

    工業用アルコール1−ブタノールは激しいブレッビングを惹起する

業績

業績1

Methamphetamine induces macropinocytosis in differentiated SH-SY5Y human neuroblastoma cells. (2010) Brain Res. 1352, 1-10
ヒト神経芽腫由来細胞株であるSH-SY5Y細胞を覚醒剤メタンフェタミンで処理するとマクロピノサイトーシスに由来する空胞が形成され、ライソソームに肥大化・加水分解酵素の不活性化といった障害を引き起こし、最終的に細胞死が引き起こされることを証明した。

業績2

Reactive oxygen species-independent rapid initiation of mitochondrial apoptotic pathway by chelerythrine. (2011)
Toxicol In Vitro. 25, 1581-1587
植物アルカロイドの一種ケレリスリンがラット心筋由来細胞株H9c2に極めて迅速なアポトーシスを引き起こすことを示した。ミトコンドリア障害に端を発するが活性酸素非依存的という新規な細胞死経路と考えられた。

業績3

Critical roles of Rho-associated kinase in membrane blebbing and mitochondrial apoptosis caused by 1-butanol. (2012) Toxicol In Vitro. in press
工業用アルコールである1-ブタノールがRhoキナーゼの活性化による、持続する激しいブレッビング(細胞膜の泡上突出)を特徴とするアポトーシス型細胞死を引き起こすことを発見した。

業績4

An inducer of heme oxygenase-1 cobalt protoporphyrin accelerates autophagy and suppresses oxidative damages during LPS treatment in rat liver.(2012) Hepatology Res. in press
細胞内毒素によるラット肝障害と抗酸化酵素誘導剤による保護作用を解析した。新たな細胞防御機構としてオートファジーによる障害ミトコンドリアの除去と酸化ストレスの軽減を認めた。

業績5

Death from axillary haemorrhage during haemodialysis in a patient with a histoly of microscopic polyangiitis. (2012)BMJ Case Rep. in press
ANCA関連腎炎患者が人工透析中に突然死した。解剖の結果死因は腋窩静脈破綻による出血性ショックであった。血管連続標本を含む詳細な組織検査、透析中の静脈圧データ解析等を行い、その原因が機械的な血管損傷ではなく、透析による静脈の内圧上昇と関連している事を突きとめた。