1.「靱帯の再考」安定化機構や病因解明のための解剖学的研究
関節疾患はその関節を安定化させる「靱帯」構造を基盤に病因、診断、治療と考察されてきました。しかし、その語源や定義を紐解くと、ほとんどの靱帯構造は関節周囲に元来存在すべき、腱・腱膜・関節包などの一部分であることが徐々にわかってきました(図1)。この概念に基づいて関節構造を再考することにより、今までは靱帯の損傷という一元的な疾患概念であったのに対して、新たな病因の解明と診断、リハビリによる治療法の革新の可能性を見いだしてきました(図2)。えられた解剖学的知見を現在、手関節、手指、膝関節、股関節、足関節と全身の関節に応用しています(業績1,2,3)。
2.転倒と脆弱性骨折についての調査研究
骨粗鬆症に伴う脆弱性骨折では、一度骨折すると、次々と骨折が連鎖する「ドミノ骨折」の形態をとり、初発骨折後の患者は、骨折のリスクが骨折前の約6倍にもなることが報告されています。特に橈骨遠位端骨折患者は、脆弱性骨折患者の中では比較的若年で、ドミノ骨折のハイリスク群です。我々は、橈骨遠位端骨折患者の握力低下と歩行能力低下に着目し、調査、解析を続けています。骨折の原因となる転倒の病態解明とその予防、骨折後の運動方法へと発展させています。 (業績4,5)
Tsutsumi M, Nimura A, et al. An Anatomical Study of the Anterosuperior Capsular Attachment Site on the Acetabulum. J Bone Joint Surg Am. 2019;101(17):1554-1562.
Hoshika S, Nimura A, et al. Medial elbow anatomy: A paradigm shift for UCL injury prevention and management. Clin Anat. 2019;32(3):379-389.
Yamaguchi R, Nimura A, et al. Anatomy of the Tarsal Canal and Sinus in Relation to the Subtalar Joint Capsule. Foot Ankle Int. 2018;39(11):1360-1369.
Fujita K et al. Lower grip strength and dynamic body balance in women with distal radial fractures
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Fujita K et al. Gait Analysis of Patients With Distal Radius Fracture by Using a Novel Laser Timed Up-and-Go System
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